自分で引っ越す場合にかかるお金と労力

車と人手さえあれば、自分の好きな時に引っ越しができるのが、自力引っ越しのメリットです。時間と労力が掛かるのは覚悟してでもなんとか引っ越し料金を安く抑えたいという人もいるでしょう。

ただ、一度にできずに何日かに分けて少しずつ運んでいては時間とガソリン代の無駄にもなるし、二重に家賃を払う期間が長くなって逆に損する場合もあります。

でも、謝礼の必要のない家族に手伝ってもらい、家電は新居で購入するため小型家具ばかりの少ない荷物を家族所有の車で運搬するという好条件が揃うなら、安上がりになるかもしれません。

自力引っ越し、考えられる費用は

自分で引っ越しをするとなると、必要な物全てを自分で用意しなければなりません。家族が荷物を運搬できる車を持っている人はラッキーですが、たいていはレンタカーを借りることになるでしょう。でも、実際にかかる費用はレンタカー代だけではおさまりません。

レンタカー、ガソリン代、高速代

軽トラックやワンボックスカー、1tトラックなど、積載する荷物の量に合わせて車種を選びましょう。近距離なら何度か往復することもできますが、遠くなら一度で済ませなければならないので、大きな車種が必要になります。

通常最短レンタル時間は3時間からとなっていますが、近距離で余程作業に慣れていないと3時間以内に終わらせるのは難しいと思います。

ワンボックスカーやミニバンよりも、軽トラックの方がロープを掛けてしっかりと荷物が固定できるし、荷物の積み下ろしがラクなため、引っ越しには適しています。雨の心配があれば、幌付きのものを選べば安心です。

レンタル料は、軽トラックで6時間までで5,000円ぐらいから、1tトラックでも24時間まで10,000円前後です。それだけではなく、満タンで返すためのガソリン代、保険料が必要になります。長距離の移動なら、高速道路代もかかります。

積み込む時は、荷物の重量の偏りがなく荷崩れしないように、また、新居で搬入しやすい順番を考えて積み込みましょう。

エアコン脱着代

自力引っ越しで、なるべく安くすませようと思っても、エアコンの移設だけは専門業者に頼んでください。

正しい手順で進めないと危険が伴いますし、部品の交換やホースの延長など、何かあった時には、結局専門の技術者に頼むことになります。自分で外して故障したらメーカーの補償対象外になってしまいます。

手伝ってくれた人へのお礼

気心の知れた仲の友人なら終わった後の食事程度でも良いかもしれませんが、そうでもない場合には、謝礼や交通費、食事代として現金を包むことが多いようです。

たとえば、引っ越しの手伝いのためにバイトの予定を入れずに来てくれた場合などは、バイト代に相当する金額は入れた方が良いでしょう。

引っ越し用品と運搬資材

ダンボールやガムテープ、家財や建物の壁を保護するための養生資材は自分で準備しなければいけません。家具は古い毛布で覆えばOKですが、築年数により建物の養生はどこまですべきか悩むところでしょう。

残念ながら雨の引っ越しになってしまった場合は、家財をできるだけ濡らさないように気をつけなければいけません。積み込む前にダンボールを濡らしてしまうと、強度面で心配です。

平らな場所の移動が長い場合は、台車があると安心です。荷崩れしないように固定するためのロープも必要です。ゆるみのないロープのしめ方など研究しておきましょう。

不用品処分代

引っ越し作業中には、これでもかというほど処分したい物がでてきます。新居で必要のない物はわざわざ苦労して運ぶ必要はありませんよね。

売れそうな物はリサイクルショップへ、処分する物は粗大ゴミや不燃ゴミなどの回収日に計画的に処分するようにします。

その日に間に合わないような時には、まとめて自分で自治体のゴミ処理場に持ち込むこともできます。持ち込んだ物の重量に合わせて料金を支払うシステムになっています。

作業面で気をつけたいこと

荷物を他の家に移す。文字にするとたったこれだけのことですが、いかに大変なことなのかは、経験者のみぞ知る、といったところでしょうか。

荷物ひとつとってもワレモノはしっかりとした梱包が必要だし、本などの重い物は大きなダンボールに入れてしまっては重くて持ち上がらないし、底が抜けてしまいます。

家電だって、扱いを間違うと故障の原因になってしまいます。でも、素人ではそういうことは事前には分かりません。失敗してあとから気付くことがほとんどではないでしょうか。

家電の扱いを知らないと故障の原因に

冷蔵庫は運ぶ時に庫内の霜が溶け出して水が出てくるので、前日にコンセントを抜いて水抜きをする必要があります。運ぶ時も、寝かせずに立てた状態のまま運ばないと、故障の原因になります。

洗濯機は給水ホースや排水ホースから完全に水を抜き、設置は必ず水平状態に保たなければなりません。そうでないと、回転軸が傾きやがて故障します。

設置も排水ホースをしっかりと固定できていないと、水浸しになってしまうことも。大したことないと思っても、壁紙に水が流れた跡が残り、思わぬ高額の賠償金を請求されることがあります。

積み込む順番がある、荷崩れがないように

トラックは荷台が広くまっ平らで載せやすいためについつい無計画に荷物を積み込んでしまいがちですが、搬入する時の順番を考え、小さい物は先に、大きい物を後に載せなければなりません。

積み荷の重量のバランスも左右均等にしないと、車体が傾いて積み荷が崩れたり、最悪カーブなどで横転の危険があります。

積みこんだら道路に荷物をばら撒かないように、しっかりとロープで固定しなければなりません。ワンボックスやバンは荷物を道路にばら撒くことはありませんが、荷物を固定するのが難しいので、荷物の破損がないように気をつけて積み込まなければなりません。

雨天時は細心の注意を

自力でやる引っ越しは自分の都合の良い日に予定を立てられることがメリットですが、運悪く雨が降ってしまうこともあります。

日にちをずらせない時は、雨の中でも作業しなければなりません。まずは、積み込む際にダンボールを極力濡らさないようにします。雨に濡れて水分がしみ込んでしまうと、ダンボールは強度が落ちて中身に余裕がある箱はヘタってつぶれてしまいます。

雨に弱い精密機器などは、しっかりと防水カバーをかけます。濡れて滑りがちなので、しっかりと持つようにして、落とさないように気を付けましょう。

荷物を持つと足元が見えにくいですが、マンホールの蓋の上や、階段で滑ることもありますので、十分に気をつけて運ばなければなりません。

想定外!荷物が入れられない

やっとの思いで新居の玄関先まで運んだのに、いざとなったら入らない!ということがあります。大きめのソファーやベッドマットなどは、狭い廊下の直角のコーナーなどは取り回しが難しいものです。どうしても目的の部屋に入れられない場合はどうしたらいいのでしょうか。

プロの引っ越し業者なら、クレーンで窓から入れたり、ベランダから吊り上げたりしますが、素人ではどうにもなりません。

そこだけでもプロの引っ越し業者に任せるか、あきらめて処分するか、どこかに一時保管するのか、その場で決断を迫られることになります。

身体が悲鳴を上げても最後までやるしかない

慣れない引っ越し作業で疲れてしまったから続きは明日、というわけにはいきません。レンタカーの延長料金を追加して払うのは、そもそも安く引っ越しするための目的から外れてしまいます。

一度やり始めたら、とにかく新居に荷物を全て運び入れないことには終われないのが自力引っ越しです。

友達や知人に頼んだ場合の注意点

何かあった時に頼りになる友だちがいてくれるのは心強いですね。一生の友となる貴重な友人を、ひょんなことから関係が悪化して失ってしまわないよう、引っ越しを頼むときに注意すべき点はどんなことでしょうか。

誰がレンタカーを運転する?

レンタカーを借りる時は、運転する全員の免許証が必要になります。また、借り主がクレジットカードを持っていない場合は、免許証に加えて本人確認書類(社員証や学生証などの顔写真つき身分証明書、住民票、公共料金領収証)の提出を求められます。

使用目的が引っ越しなら、新居の住所を記載することもありますので、正しい新住所が分かるようにしておきましょう。

謝礼のトラブル

たとえばですが、何人かの友人に引っ越しを頼んだ場合、力自慢の友人が重い物を率先して運んでくれて、他の人の2倍も3倍も働いてくれて随分助かった、という場合があったとします。

そんな時は、他の友人と同じ額の謝礼でよいのかどうか悩んでしまいませんか?同様に、男性と女性に頼んだ場合、同じ謝礼でよいのかも考えてしまいます。同じでも、違っても、問題があるような気がするのはなぜでしょう。

気心の知れた仲ならそんな面倒なことにならないのに、とする人がいる一方で、気心の知れた仲だからこそ、そういうことはきちんとすべき、という意見もあるのです。

物損、事故、盗難紛失で関係悪化

一生懸命手伝ってくれて悪気はないのはもちろん分かっているから恨みもないけれど…というようなケースが、友達に引っ越しの手伝いを頼んだ場合に起こりがちです。

たとえば、荷物を落として壊れてしまった。その時に、フローリングの床に傷が付いてしまった。そんな場合は、荷物は諦めても、賃貸物件のフローリングは補修しなければなりません。

床材と面積にもよりますが、全面張り替え交換ということにでもなれば、数十万円になってしまうこともあります。

トラックから荷物を下ろし室内に運び入れる時に、トラックが無人になってしまうことはありがちです。そんな時に、荷台から荷物が無くなってしまったらどうしますか。

最後に残ったのは誰だったか、犯人探しならぬ責任転嫁のもめごとは避けたいところです。

まとめ

引っ越し業者に頼まずに自分で引っ越しをするのは、思った以上に色々なことに精通し、万全の準備が必要そうだと感じませんでしたか?

しかも用意周到で引っ越し当日を迎えても、いざ始まると何が起きるか分かりません。もし何か起こっても素人では対応できる知識に乏しいことは否めません。

そして、大方の人が自力引っ越しが終わって思うことは……

「なぜ全てを自分で出来ると思ったんだろう」「自力引っ越しにこだわる必要はなかった」「こんなことなら業者に頼んだ方がよほど安く済んだ」

こんなところではないでしょうか。

自分でやってみようと思うのは、一括見積もりサイトで引っ越し料金がどれだけ安くなるかを確認してからでも遅くありませんよ。
一人暮らしでの引っ越しについては、こちらの「一人暮らしで引っ越す場合」を参考にしてください、