引っ越し当日のスタッフへの差し入れは必要?

読書が趣味の人の引っ越しは、重たいダンボールが山積みになります。「これ全部、本ですか!?」と目を丸くして驚かれ、「すみません。電子書籍より紙の方が好きなもので。」と恐縮しきり。

仕事だからと文句を言わず、汗だくで荷物を運んでくれるスタッフさんを見ると、申し訳ない気持ちでいっぱいです。

お礼の気持ちで、何か差し入れしたいと思うのだけど、渡すタイミングが分からないし、何をどう渡したらいいのかすら、わからないという人も多いでしょう。そもそも、正当な料金を支払っているのに、差し入れって必要でしょうか。

必要か不要かで言えば、不要

日本は諸外国と違いチップの習慣はないものの、旅館で身の回りを世話してくれる仲居さんに「心付け」として渡すことは昔からありました。

庭木の剪定をしてくれる植木屋さんには、途中でお茶を出したりしますし、保険の更新手続きで来てくれた保険勧誘員にもお茶を出すことがあります。

そのような感覚で、目の前で忙しく動いてくれている作業員に対して、どうしたものか…という気持ちになるのも無理はありません。

しかし、基本的には「請求書に記載していない金品の収受は一切必要ありません」と言えます。

受け取りを禁止している業者もある

「少額の心付けを現場のリーダーへ人数分渡したところ、一人分だと勘違いされたのか全員に回してもらえなかったようだ」とか、「差し入れのようなものは一切受け取ってないが、ひょっとしてリーダーが着服しているのではとスタッフが変に勘繰った」など、様々なトラブルの元となるのを防ぐため、業者が現金の受け取りを禁止しているケースもあります。

形式上一度は断るようですが、二回断ったり、「会社から禁じられているので」と言われたら無理強いするのもいかがなものかと思います。

引っ越しの規模にもよる

休憩を挟む必要もなく短時間で済むような引っ越しで、急いで次に向かわなければいけない場合は、渡す準備をしていても、うっかり渡しそびれることもあります。

荷物の量が多く作業員が大勢の時には一人ひとりには少額でも、全体では結構な額になり負担になる場合もあります。

後から他の作業を終えたチームが合流してくれて一気に終わったのだけど、どう差別化をしてお礼をしたらよいのか悩み、結局全員に渡せずじまいだったということもあるようです。

若い単身者は気が付かないまま終わる

旅館の仲居さんやハイヤーの運転手さんに心付けを渡すような場面に遭遇しない限り、そういった日本古来の習慣を知らない若者もたくさんいます。

そういう人は「心付け」なんて気付くこともないでしょうし、よって悩むこともないかもしれません。

それでも過半数が必要と感じている!

引っ越し料金はあくまでも会社に支払うものであって、当然そこからお給料はもらっているはずです。でも、目の前で働いてくれる作業員たちに、よろしくお願いしますとか、お礼の気持ちを言葉だけでなく形で表したい、と思う人も多いようです。

なぜ必要と感じるのか

作業員たちは、別に差し入れがあろうがなかろうが、作業の質を変えたりはしません。それでも、自分たちのためにわざわざ用意してくれた差し入れが嬉しくないわけがありません。

よろしく、ありがとう、という気持ちで渡されたなら、依頼者とのコミュニケーションもうまくいく気がして、よりがんばろうという気持ちにもなるのではないでしょうか。

そして、別に義務的に必要と感じているわけではなく、汗をかいて頑張ってくれている作業員たちに「これでも飲んで一息ついてね」と、飲み物を差し出すことは多いのではないでしょうか。

こんなケースも

年齢層や地域、また家庭によっても様々なパターンがあるかと思います。「引っ越し」は、その人の人生にとって新生活がスタートする一大行事であり、お祝い事としてとらえ「引っ越し祝い」を送ることがあります。

高齢者や自営業だと心付けを渡すことが多い

年配の人たちは、お孫さんたちにお小遣いを渡すかのように、「よく来てくれたね」と、ポチ袋や和紙に包んで現金を渡すことが多いようです。

また、自分が商売をしている人たちは、「開業」、「移転」などお花を送りお祝いのやりとりをすることが多く、引っ越しをお祝い事としてとらえ作業員たちや関わってくれた人たちに「御礼」や「寸志」として配ることがあります。

新築や結婚での引っ越しは、おめでたいお祝いごと

結婚披露宴で介添えさんや受付や幹事など新郎新婦がお世話になったスタッフや友人に、新郎新婦のご両親から御礼として「心付け」を渡しますよね。

それと意味合いが似ていて、結婚をして新しく二人で住むことになった、念願のマイホームを手に入れた、という時の引っ越しは、お祝いごととして、お世話になった作業スタッフに、紅白の水引のあるポチ袋で御礼やお車代として出されるようです。

どんなものが喜ばれる?

昔は作業員差への差し入れの定番にタバコがありましたが、今は健康志向で吸わない人も多いですし、タバコの種類も増えて好みもあるのでおすすめできません。やっぱり一番いいのは、みんながもらった時に素直に嬉しいと思えるものでしょう。

現金

心付けとして現金を送る場合は、お昼代として1,000円から2,000円ぐらいを包むのが相場です。あまり多いと負担になりますし、作業員も恐縮し、余計なプレッシャーを与えてしまうかもしれません。

飲み物

動けば汗をかきますし、のども渇きますので、ペットボトル飲料がおすすめです。お茶、スポーツドリンク、炭酸、ジュース、コーヒーなど色々と種類があるので悩む人も多いです。

ゆっくり味わって飲むというよりも、のどの渇きをいやすためなので、甘い物よりも、お茶やスポーツドリンクが好まれるようです。口直しのためか、ミネラルウォーターを好む人もいます。

真冬でも動くと暑くなるし、ゴクゴク飲みたいので、温かい物でなく冷たい物か常温でも十分だそうです。

食べ物

個包装のお菓子を飲み物と一緒に付ける人もいます。夏場のチョコは溶けやすいので不評です。パックになっているゼリータイプの栄養補給食品や、暑い時には冷たい氷菓も喜ばれるようです。

その他

地方名産の珍しいお菓子が嬉しかったり、疲れた時には甘い物と考える人もいました。冷やしたスイカを切ってもらって、縁側で楽しくみんなで食べた、という話もあります。

渡すとまずいものは?

渡されたほうが困るような高額な金品はもちろんですが、意外と食べ物系の差し入れも喜ばれるとは限りません。あくまでも「もらった人が嬉しいもの」を差し入れるべきで、決して「冷蔵庫の中身の整理を手伝ってもらおう」なんて思ってはいけません。

生物、手作りの食べ物

もてなして振る舞いたい気持ちがあっても、生ガキや寿司などの生ものは避けましょう。引っ越しに備え、冷蔵庫の中身の整理をするために、大量に作った物を作業員たちにも振る舞いたい気持ちは分かるのですが、いつ作られどのように保管されていたか分からないでは、安心して食べることができないのではないでしょうか。

お弁当

感謝の気持ちを込め、お昼に豪華な仕出し弁当を注文して出す人もいます。精進料理のように少しずつ色々な種類の物があり、見た目にも美味しそうでありがたいのですが「量が足りない」という声が多いです。

肉体労働なのでカロリーの高い物をガツガツ食べたい、近所に評判の良い店があるのでそこで食べてみたい、という声もありました。

高額の現金

高額すぎる現金を、近くにいた作業員に「みなさんで使ってください」と渡したのでは危険すぎます。少し抜いたり、着服したりとトラブルの元になってしまいます。

受け取った作業員はそんなことをしていなくても、仲間に疑いの目で見られてしまっては気の毒です。

渡すタイミングはいつがベスト?

作業員の人たちはみんなで一緒にいてくれず、ずっと動きっぱなしなので、誰にいつ渡してよいか分からない。

タイミングを窺っているうちに、出すタイミングを失ってしまった、なんてこともあります。心付けは義務ではないし、渡すのはいつでも良いのかもしれないけれど、他の人は一体どうしているのか気になりますよね。

「よろしくお願いします」で先に渡す

現場責任者と作業スタッフが到着し、出迎えて一通りの挨拶をし終わり、作業開始前に「今日はよろしくお願いします」と心付けを一人ひとり手渡すか、人数が多ければみんなの前で現場責任者に「皆さんでどうぞ」とまとめて渡します。

区切りの良い時に「どうぞ」と差し出す

「休憩を取らせて頂きます」の声掛けがあった時か、一段落終わった様子が見えた時に、「どうぞ」と渡します。

「ありがとうございました」で後に渡す

引っ越しが終わり、最後の挨拶で全員が揃った時に「今日はありがとうございました」と、個別か現場責任者にまとめて渡します。

最初が渡しやすい、足りないと思えば追加することもできる

こうやってタイミングを3つ並べてみると、最初に挨拶を交わした時に、一人ひとり手渡すのがベストではないでしょうか。

現金ならば「お昼代にでも」と言えますし、ペットボトルのお茶やスポーツドリンクなら、最初に渡しておけば、各自で好きな時に飲めます。

一人ひとりの動向を窺いながら冷たい飲み物をタイミングの良い時に渡すわけにもいきませんので、クーラーボックスか保冷バッグに凍らせたペットボトルと普通のスポーツドリンクやお茶を一緒に入れておいて「お好きな時にどうぞ」と置いておくのも気が利いていますよね。

凍らせたペットボトルは、暑い時に首筋や脇など太い血管がある部分に当てて体を冷やすことができ、熱中症対策にもなります。

手っ取り早く栄養が補給できるゼリータイプのものや、疲労回復のアミノ酸のゼリーなども一緒に冷やしておくと喜ばれます。

まとめ

日本人の礼儀正しさや「おもてなし」の心は、昔から伝わってきた日本の文化です。金額の大小や物の量ではなく、感謝の気持ちとして何か渡したいと思うのは、自然なことだといえます。

飴玉ひとつだって、もらって悪い気がする人はいないでしょう。差し入れを渡したことで、コミュニケーションが生まれ、たった1日や2日とはいえ、人間関係がスムーズにいくのであれば、ありがたいことですよね。

そのような点からも、やはり渡すタイミングは最初が良いでしょう。