引っ越し業者のトラックには同乗できない

ドラマや映画の主人公が故郷を後にするシーンで、引っ越しトラックの助手席の窓から身を乗り出して手を振っている…こんな場面を見たことあるでしょう。

荷物と一緒に自分も運んでもらえるうえ、上京の交通費も浮くから一石二鳥。今度の引っ越しでは、ぜひそうしよう。4人家族だけど、前に乗れなければ後ろの荷台でいいかな…なんて思ってる人はいませんか?

実はこれ、NGなんです。その理由と移動する際の注意点について、見ていきましょう。

乗車賃を払えば乗せてくれる?

「引っ越し料金とは別に、ちゃんと乗車賃は払うから。一緒に到着してすぐ作業できるから、そちらも都合がいいでしょ?」などと、お客さんのなかには引っ越し業者にゴリ押しする場合もあります。しかし、ハッキリいってそれは『違法』です。

引っ越しトラックになぜ同乗できないか、その理由は以下の5点です。

理由1. 業種が違う

引っ越し業者は荷物を運ぶことが仕事で、お客さんを運ぶのはバス会社やタクシー会社の仕事です。

引っ越し業者は一般貨物自動車運送事業の許可申請、バスやタクシー会社は旅客自動車運送事業の許可申請を、国土交通省の管轄区域の運輸支局に届け出ます。そして厳しい審査を経て、正式に許可を受けて営業しています。

つまり、お客さんを乗せて運賃をもらうことができるのは、正式に許可を受けたバスやタクシー会社だけになります。

理由2. 直行しないことがある

引っ越しトラックが必ずしも荷主の転居先に直行するとは限りません。途中で他の支店や営業所に立ち寄ったり、混載便の場合は他のお客さんの引っ越し先に向かって荷物を載せたりすることもあります。また、別のトラックに荷物を積み替えて、運転手がUターンするもあります。

理由3. 乗る余裕がない

トラックは乗用車でなく、あくまでも貨物輸送を目的とした車です。そのため乗車定員は少なく、作業員だけで定員オーバーとなります。

荷台の積み荷を監視することは特例として許される場合もありますが、いつ荷崩れが起きるかも分からない荷物に囲まれた場所で、緊張しながら乗る理由もありません。

理由4. 事故の補償がない

運転手がいくら慎重な運転を心がけていても、事故はいつ起きるか分かりません。万が一事故が起きた場合、預けた家財は業者が加入している引越運送保険で補償されますが、依頼主であるお客さんに対しては、一切の責任を負うことができません。

引っ越し業者の運転手は当然会社の保険に入っているので、ケガをした時の治療費や入院費、通院費、休業中の給料の補償がされます。しかし会社の作業員でなければ、それら全ての費用は自分で賄う必要があります。

そんなリスクを負うことを覚悟で、居住性の良くないトラックの助手席に乗りたいと思いますか?

理由5. 違法なので営業停止にも

お客さんを乗せて料金をもらう仕事をする運転手は、第二種運転免許を取得していなければなりません。これは普通の運転免許とは違い、難易度の高い試験です。この試験に合格して訓練を受けた人だけが、お客さんを乗せて走ることができます。

お客さんに頼み込まれてやむなく乗せたあげく、事故に遭っては大変です。警察の現場検証や保険会社の調査で必ず分かることですし、下手をすれば運転手だけでなく引っ越し業者自体が営業停止や廃業に陥ることも考えられます。

例外で認められている場合も

ただ、例外的にお客さんの同乗を認めている場合もあります。積極的にすすめているわけではなく、やむを得ない時に特例として認めているものです。もちろん個人で保険に加入しなければ、何の補償も受けられません。

同乗することになっても、なるべく短時間、短距離にすむようにしましょう。業者によりますが、万一何かあっても責任を負わない旨の念書を取り交わす場合もあります。では、考えられる特例を3つ紹介します。

特例1. 道案内

引っ越し先に向かう際に「目的地周辺です。音声案内を終了します」と、カーナビに冷たく見放されることがあります。そうなると、引っ越しトラックの運転手は見知らぬ土地でお手上げです。

お客さんと連絡を取って道順を聞こうにも、お客さん自身もまだよく知らない土地なのでうまく説明できない…という事態に陥りかねません。

そんな時に、引っ越し先の近くで待ち合わせてお客さんをトラックに乗せ、道案内をしてもらいます。そうした理由のある時には、違法にはなりません。

特例2. 荷物の監視

異例ですが、お客さんから要望があれば、荷台に積んだ荷物の監視という理由で許される場合があります。監視する理由としては積み荷の崩れ防止や信号待ちでの盗難の防止などがありますが、あまり前例はありません。

特例3. 引っ越し専用特殊車両

なかには、近・中距離の引っ越しにおいて、荷物と一緒に家族の移動ができる専用の特殊車両を持つ引っ越し業者があります。荷室と客室を分け、座り心地と内装にもこだわった特別な車両です。

車イス利用のためのリフトやペットケージの設置スペースもあり、ベテランドライバーが運転します。引っ越し料金以外の別料金はかかりません。取り扱っている業者でも一部の地域で未対応の場合もあるので、利用したい場合は早めの相談が必須です。

移動計画を立てる

引っ越しトラックに同乗できないことを引っ越し当日に知り、急いで飛行機のキャンセル待ちを予約して家族別々の便でようやく移動できた、という人もいます。

当日になって慌てることのないように、あらかじめ移動方法を考えておきましょう。計画を立てるにあたって考慮すべき2つのポイントを見ていきましょう。

ポイント1. 車か公共交通機関で移動

長距離の運転でも苦にならず、交代で運転できたり、小さい子どもがいたりする場合は、車での移動が何かと融通がきくので便利です。公共交通機関のように他のお客さんに気兼ねすることもありません。

新幹線や飛行機を利用する時は、早めに希望の席を予約してチケットを手に入れましょう。

ポイント2. 新居の鍵を受け取り、先に到着する

不動産会社から鍵を受け取り、誰かしら先に新居に到着しておきましょう。引っ越しトラックが先に着いても、家主がいないと搬入作業を始められません。

また、業者に近くで待機してもらうことになると、その時間分の車両留置料が発生するので、注意しましょう。

引っ越し業者の運転手が優しくて頼れるタイプだったとしても、決して無理に同乗を頼まないでください。良心的な業者の運転手であれば、お客さんの安全を第一に考え、丁寧に断るのが当然です。

引っ越しの際には業者に頼らずにスムーズに移動できるよう、自身で事前に計画を立てましょう。

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